俳句の作り方     紫陽花の俳句

 あぢさいやきのふの手紙はや古ぶ    橋本多佳子はしもとたかこ

あじさいや きのうのてがみ はやふるぶ

 

 

 紫陽花が夏の季語。

「梅雨時を代表するユキノシタ科の落葉低木の花。

額紫陽花を母種とし、日本原産と言われる。

花色は酸性土壌では青、アルカリ性土壌では赤紫色となる。」

 (俳句歳時記 夏 角川書店編)

 あぢさいやきのふの手紙はや古ぶ

 

 

 あぢさいやきのふの手紙はや古ぶ

 

 

 句意を申し上げます。

紫陽花が咲いているこの季節に、昨日書いた手紙がもう早くも古びて見える。

 

 

 鑑賞してみましょう。

紫陽花の色がゆっくり変わり始める頃、私は机の上の一通の手紙を見つめていました。

それは家庭を持つ恋人にあてて、昨日の私がまだ望みを捨てきれずに書いたものでした。

封をしたとき、胸の奥にはたしかにあなたへの熱が残っていました。

けれども今朝の光の中では、その熱は自分を焼く痛みに変わっていました。

 夜の間、私は諦めを受け入れようとしました。

紫陽花が色を変えるように、恋の痛みもまた形を変えていくのです。

昨日は真実だった言葉が今朝にはもう古びてしまう。

それでも胸の奥では、あなたを手放せない痛みだけが静かに残っていました。

 私はその手紙を持ち上げてそっと置きなおしました。

手紙を出さないことでしか守れないものがあると、ようやく理解したのです。

紫陽花の色が戻らないように、この恋ももう昨日には戻れません。

私は焼けるような痛みを抱えたまま、恋を自分の手で静かに閉じることにしました。

 あぢさいやきのふの手紙はや古ぶ

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